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論文

欠陥マンション紛争 〜耐震構造偽装マンション問題から考える

弁護士 武井共夫

欠陥マンションとは

 一口に欠陥マンションと言ってもいろいろだが、一般的には、土地もしくは建物のいずれかに瑕疵(契約どおりでなく、不完全な点)の存するマンションを欠陥マンションという。

一般に建物に瑕疵がある場合が多く見られ、いわゆる耐震構造偽装マンションは、その最たるものである。

平成17年11月17日、国土交通省は、建築構造設計事務所が構造計算書を偽装していたと発表し、これをきっかけに多くのマンションが建築基準法の耐震基準を満たしていないことが明らかとなった。

私自身、偽装発覚後に耐震構造偽装マンションの管理組合の顧問弁護士を務め、被害救済の現場で取り組んできたが、その経験から、欠陥マンション紛争について、考えてみることとする。

耐震構造偽装マンション問題

構造計算書を偽装し、建築確認を得られる強度1未満で建てられたマンションを耐震構造偽装マンションや耐震強度偽装マンション・構造計算書偽装マンションなどという。

耐震強度が1であれば、震度6ないし7程度の地震でも倒壊しないと考えられ、1未満では耐震強度が不十分なので補強工事が必要であるとされ、耐震強度が0.5未満であったものは震度5強の地震で倒壊の可能性があるとして、使用が禁止された。

私が管理組合顧問を務めるマンション(以下「Aマンション」という)は、鉄筋コンクリート(RC)7階建、42戸、耐震強度は、0.57で、1部は1を超えていた。売主は、ヒューザー(破産会社)、施工業者は、名目上は松村組(再生会社)で、

実質的には一括下請の木村建設(破産会社)である。建築確認は、平成11年2月4日に川崎市でされており(民間確認機関ではない)、同年中に竣工・引渡がされている。

品確法と瑕疵担保責任

平成12年4月1日施行の住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)は、「住宅の構造上主要な部分」等の瑕疵について、引渡時から10年間の瑕疵担保責任を認めている(95条)。

一般に、売買の場合の瑕疵担保責任は、民法570条・566条で、契約の目的を達成できない場合の契約解除と代金返還請求・損害賠償請求が売主の故意過失を問わず、認められている(無過失責任)。期間は、一般的に契約で引渡から2年とされていることがほとんどである。なお、宅地建物取引業法は、2年未満にする特約を無効としている(40条)。

品確法により、平成12年4月1日以降の新築住宅(したがって、Aマンションは該当しない。)については、その期間が10年間認められると同時に民法では認められていなかった「瑕疵修補」請求も、売主の故意過失を問わず、認められるようになった(無過失責任)。

また、建替が必要な場合には、当然建替費用も認められることになる。

売主に故意過失があれば、瑕疵担保責任とは別に債務不履行もしくは不法行為に基づく損害賠償請求をなし得ることは、もちろんであるし、施工業者に故意過失がある場合には、不法行為に基づく損害賠償請求をなしうることもある。 なお、福岡高裁平成16年12月16日判決は、「建築請負の目的物である建物に瑕疵がある場合、請負人について、瑕疵担保責任の成否以外に、当然に不法行為の成立が問題になるわけではなく、その違法性が強度である場合、例えば、請負人が注文者等の権利を積極的に侵害する意図で瑕疵を生じさせたという場合や、 瑕疵の内容が建物の基礎や構造躯体に関わり、それによって建物の存立自体が危ぶまれ、社会公共的にみて許容しがたいような危険な建物が建てられた場合に限って、不法行為責任が成立する余地が出てくるものというべきである」と判示している。

建築確認問題

耐震偽装マンションの場合には、建築確認が適切になされなかったという問題がある。それにより、建築確認検査制度の信頼性は大きく崩れ、制度自体に問題があることが指摘されている。

また、それらの建物の建築確認・検査の多くが民間指定確認検査機関で行われていたことから、民間指定確認検査機関という制度の問題点を指摘する声も強い。

建築確認時に故意過失によって、耐震偽装を見落とした場合には、特定行政庁は、自らが確認を行った場合でも民間指定確認検査機関が確認を行った場合でも、同様に国家賠償法に基づき、損害賠償責任を負う。

判例も同旨であり、民間指定確認検査機関が確認を行った場合について、最高裁判所平成17年6月24日第二小法廷訴えの変更許可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件決定(判例時報1904号69頁)は、 「指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たる」と判示し、 横浜地裁平成17年10月30日判決は、民間指定確認検査機関の業務に関し、故意過失があれば、特定行政庁が損害賠償責任を負う旨明示している。 Aマンションは、前述のとおり、川崎市が建築確認を行っている。

公的支援策

耐震強度0.5未満の耐震偽装マンションの建替については、公的支援策が打ち出されたが、区分所有者の自己負担額が大きく、建替策がスムースにまとまったところは僅かである。

耐震強度0.5〜1未満のマンションの補強工事にも、3分の1から2分の1程度の公的支援が予定されるに至ったが、補強工事の方法がまとまったところはやはりほとんどない。

専有部分と共用部分

マンションの瑕疵は、各区分所有者の専有部分に存する場合と、建物の敷地や建物の共用部分に存する場合とがある。

専有部分の瑕疵については、当然各区分所有者が瑕疵担保責任を請求しうる。

共用部分の場合には、各区分所有者が個々に請求する場合と管理者が請求する場合とがある。

欠陥マンションと管理組合

建物の区分所有等に関する法律は、共用部分の管理について、18条で「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」と定めているので、 瑕疵担保責任の追及が共用部分の管理に含まれる場合には、区分所有者が単独で保存行為として追及をなし得る場合も考え得るし、通常は、管理者が行う。

ただし、損害賠償請求権については、可分債権として、各区分所有者に帰属すると解するのが判例である(たとえば、東京高裁平成8年12月26日判決、判例時報1599号79頁)。

しかし、これらの判例に対しては、批判的な見解が多く、平成14年に区分所有法が改正され、以下のようになった。

すなわち、管理者の選任について、25条で、「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる。」とし、 26条で、管理者の権限を「管理者は、・・共用部分等・・を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。」とした上で、 「2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。・・・損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 4管理者は、規約又は集会の決議により、その職務・・・に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」と定め、管理者の代理権及び訴訟当事者適格を認めている。

また、管理組合が法人となったときは、47条で、「6管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。・・・の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 8管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務・・・に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」と管理組合法人の代理権及び訴訟当事者適格が認められる。

従って、共用部分に欠陥があった場合には、管理者や管理組合法人は、その補修や損害賠償の請求等について、区分所有者を代理しうるし、規約の定めまたは集会の決議があれば、訴訟の当事者にもなりうる。

実務上、管理組合法人にして、規約で予め定めておけば便利と思われ、私もAマンションの管理組合の法人化を助言し、それにより法人化するとともに規約で訴訟の当事者適格を定めた。

区分所有者間の調整

欠陥マンション問題では、区分所有者間で意見が食い違うことが少なくない。

まず、欠陥を問題にすること自体について、(ブランド)イメージや資産価値が低下するなどと言って反対する人が現れることが多い。

また、補修工事や補強工事が必要な場合に売主に十分な資力がない場合に、全部または一部の自己負担で修補・補強工事をするかどうかも問題になる。

負担能力は各区分所有者ごとに様々であり、なかなか一律の負担を求めるのが困難なのが実情である。

耐震偽装マンションではまさに建替費用や補強費用の負担が高額すぎて区分所有者で負担しきれないということが問題となっている。

Aマンションでも、現在川崎市が再検査に着手しているが、住民にも、少しでも少ない補修費用の負担をとるか、確実な安全性をとるかという相克する気持ちや資産価値はどうなるのかという不安がある。

いずれにせよ、売主・施工業者・行政等と折衝するにも、区分所有者間の一致した対応が不可欠であり、合意形成の努力が求められる。

財源問題

合意形成のためには、やはり財源確保の努力が必要である。

財源を確保するためには、まず、売主(瑕疵担保責任)や施工業者(不法行為)に対して修補費用・補強費用等の損害賠償請求をすることになる。

Aマンションでも、私が代理して、木村建設・ヒューザー・小嶋社長個人への各破産債権届出を行い、ヒューザー管財人からは、7月に、補修費用・諸経費・慰謝料等の債権を認め、20%程度の配当を行う旨の方針が示されており、この点でも少々希望が見えている。

また、木村建設に対しても、「建設業者は、施工技術の確保に努めなければならない。」という建設業法25条の25に基づく施工技術確保義務を負っており、設計に瑕疵があるのを見過ごした過失により、不法行為に基づく損害賠償請求を主張している(前掲福岡高裁平成16年12月16日判決参照)管理組合で、独自の財源確保を工夫する努力も必要である。

Aマンションでは、ヒューザーに1台月3000円で、42台分の駐車場専用使用権を設定し、ヒューザーは、住民に1台1万5000円で賃貸していたが、管財人に返還を請求し、これも認められる方向なので、差額を補強費用に充てる予定である。

賃貸マンション

一部または全部が賃貸のマンションの場合には、利害関係が一層複雑になる。

分譲マンションで、多くの区分所有者は居住しているが、一部の区分所有者が賃貸に出している場合、賃貸に出している区分所有者の中にはどうしても、管理や欠陥に対する意識が低くなり、消極的な対応をする人も出てくることがある。

全部を賃貸に出しているワンルームマンションなどでは、積極的に管理に関心を持つ区分所有者がより少なく、欠陥があった場合には、問題は、さらに深刻である。

賃借人は、安全なマンションに居住する権利があるが、それを守るメカニズムがほとんど働かない場合が懸念される。

いずれの場合でも、資産価値に直結する問題でもあるので、しっかりした管理組合を確立することが大切であり、マンション分譲業者も、本来そこまでアフターケアをすべき義務があると言っても良いように思う。

まとめ

一口に欠陥マンション紛争と言っても、あまりにも問題が多岐にわたり、私の力量不足もあって、まとまりのない文章になってしまった。

ただ、今回の耐震偽装マンション問題が、欠陥マンション問題を改めて真剣に問い直す契機となることを祈って、まとめに代えることとする。


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