相続・遺産分割についてよくあるご質問を、質疑応答形式で掲載しています。ご参考になさってください。
相続・遺産分割Q&A
相続は人が死亡すると始まります(亡くなった方を「被相続人」といいます)。
被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。被相続人に子どもがいる場合、その子どもも相続人となります。被相続人に子どもがいない場合にはその直系尊属(実親等)が、子どもも直系尊属もいない場合にはその兄弟姉妹が相続人となります。
法律で定められた各相続人の相続分(「法定相続分」といいます)は以下のとおりです。
- 相続人が配偶者と子どもの場合→各2分の1ずつとなります。
- 相続人が配偶者と直系尊属の場合→配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1となります。
- 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合→配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
- 同順位の相続人が複数人いる場合は、各人の相続分は均等となります。
- (例)相続人が配偶者と子ども3人の場合
- →配偶者の相続分は2分の1、子ども3名の相続分は各6分の1
5.配偶者がいない場合、同順位の相続人により均等に相続することとなります。
- (例)相続人が兄弟3名だけの場合
- →各相続人の相続分は各3分の1
- ①被相続人が遺言書を作成していた場合、その遺言書の内容に従って分割をすることになります。
- もっとも、相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる分割をすることも可能です。
- ②被相続人が遺言書を作成していない場合、相続人全員の協議によってどのように分割するかを定めます。
- 相続人全員の同意が必要となりますので、一部の相続人を欠く遺産分割協議は無効となります。
- 相続人全員の同意があれば、法定相続分と異なる割合による遺産分割も可能です。
被相続人の債務は、相続開始と同時に、法定相続分に従って各相続人が当然承継するものとされています。
- (例)被相続人の債務が1000万円、相続人が配偶者及び子ども2名の場合
- →配偶者が500万円、子ども2名が各250万円ずつ債務を承継することになります。
なお、遺産分割協議によって、相続人の一人が全ての債務を承継するなどと合意したとしても、その合意の内容を債権者が承諾しない限り、債権者に対抗する(主張する)ことはできません。
家庭裁判所に「相続放棄の申述」をすることにより、相続人の地位を放棄することができます。なお、相続放棄により相続人ではなくなりますので、債務だけでなく財産を相続することもできなくなります。
また、家庭裁判所で手続をしない限り、債権者に対抗(主張)できません。例えば、相続人全員による遺産分割協議において、「自分は財産もいらないかわりに借金も引き継ぎません」などと述べ、他の相続人が同意したとしても、債権者の承諾がない限り、債務を免れることはできません。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に手続をとる必要があります。 「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人が死亡し、自身がその相続人であることを知った時、という意味です。3箇月以内に放棄をしなかった場合は、相続を承認したものとみなされます。 なお、この「3箇月」の期間については、家庭裁判所に請求することによって延長することが出来ます。また、3箇月を超えた場合であっても、事情によっては相続放棄が認められる場合もありますので、ご相談ください。
限定承認とは、相続人が相続によって得た財産の限度で相続債務等を弁済する前提で、相続の承認をすることです。相続財産、債務額が明らかでない場合などに、限定承認がなされることがあります。 なお、相続人が複数いる場合、限定承認は相続人全員で行う必要があります。また、放棄の場合と同様、3箇月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
特別受益とは、相続人が、被相続人から、①遺贈(遺言による贈与)②婚姻、養子縁組、もしくは生計の資本としての贈与、を受けた場合の利益を言います。
例えば、結婚にあたっていくらかの援助を受けた場合や、生活費の援助として贈与を受けたような場合です。この特別受益については、その贈与額も相続財産とみなして(相続財産に含めて)具体的な相続分を決することとなります。
- (例)相続財産5000万円、相続人は配偶者A、子どもB、子どもCの3名だが、
- Cが被相続人の生前に婚姻のため1000万円の贈与を受けていた場合
- →みなし相続財産は5000万円+1000万円=6000万円。
これを法定相続分に従って分割すると、A3000万円、B1500万円、C1500万円。もっとも、Cは1000万円の特別受益があるためこれを控除し、A3000万円、B1500万円、C500万円、となります。
寄与分とは、相続人が、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与(貢献)した場合における、その維持分あるいは増加分を言います。
寄与分が認められるのは「特別の」寄与をした場合ですので、例えば妻が夫に対し通常想定される程度の看護をした、というような場合には寄与分が認めらないものと思われます。寄与分が認められた場合、その寄与分を控除したものを相続財産とみなされます。
- (例)被相続人の相続財産は5000万円、相続人は子A、B、Cの3名だが、子Aに500万円の寄与分が認められた場合
- →みなし相続財産は5000万円−500万円=4500万円。
- これを法定相続分に従って分割すると、A、B、Cとも各1500万円。
- もっとも、Aには500万円の寄与分が認められるため、A2000万円、B1500万円、C1500万円、となります。
家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。
「調停」とは、いわば家庭裁判所での話し合いであり、家庭裁判所の調停委員が中立な立場で各当事者の意見の調整をします。調停でも合意ができない場合、「審判」となります。「審判」とは、家庭裁判所の審判官が、各相続人の意向も踏まえて、遺産分割の方法を定めることを言います。
- (1)どのような方法がありますか。
- →妻に全ての財産を相続させる旨の遺言書を作成する方法があります。詳細は遺言書Q&Aをご参照ください。
- (2)遺言書を作成すれば、全ての財産を妻に相続させることができますか。
- →あなたが亡くなった後、子が「遺留分」を主張した場合には、子にも相続財産の4分の1の権利が認められます。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、直系尊属)に一定割合で認められている権利です。 具体的な割合については遺言書Q&Aをご参照ください。
- (3)子に、事前に(私の生前に)相続の放棄をしてもらうことはできますか。
- →できません。
- (4)子に、事前に(私の生前に)遺留分の放棄をしてもらうことはできますか。
- →家庭裁判所の許可を得た場合に限り可能です。
- (1)私が死亡した場合、相続はどうなりますか。
- →原則として、配偶者が4分の3、ご兄弟が4分の1の割合で相続することになります。
- (2)全ての財産を配偶者に相続させるためにはどうすればよいですか。
- →その旨の遺言書を作成してください。
- (3)兄弟に遺留分が認められませんか。
- →兄弟姉妹には遺留分が認められないため、遺言書があれば全ての財産を配偶者に相続させることができます。
500万円を援助したことを証明できれば寄与分として認められる可能性は高いですが、その場合でも全額認められるとは限りません。
文責:奥 祐介
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