少年事件についてよくあるご質問を、質疑応答形式で掲載しています。ご参考になさってください。
少年事件のQ&A
人が刑罰法規に触れる行為をしたとき、・大人(20歳以上)の場合、犯罪として、誰でも見ることができる公開の法廷で刑事裁判を受け、死刑・懲役・罰金などの刑罰が科されることになりますが、 ・少年(20歳未満・女子も含みます)の場合には、非行として、一般に公開されない非公開の法廷で裁判(少年審判といいます)を受け、少年院に送るか・自宅に戻れる保護観察かなどの処分が下されることになり、一部大人と同じ刑罰が科されるときがあります。 刑事裁判と少年審判は全く別の手続で、内容が異なります。しかも、刑事裁判に比べて少年審判は、一般になじみがありません。
14歳以上の少年であれば逮捕することができますので、現実に14歳でも逮捕されるケースはあります。14歳といえば中学生の年齢ですが、集団で人に暴力を加え、怪我を負わせた場合など、中学生が逮捕されるケースは決して少なくありません。 逮捕及びその後の手続は大人の刑事裁判の場合と同様ですので、その詳細は刑事手続きに関するQ&Aをご参照ください。
少年の場合の特徴としては、大人と違い、逮捕され勾留されても、非行内容が複数回または複雑にならない限り、10日間のみで終了する場合が多いように感じます。大人であれば、勾留は原則20日間までです。 少年は、一般的に、大人よりも捜査機関(警察や検察)の取調に対する防御力が弱いとされています。まだ心身ともに成熟していないため、強い捜査機関を前に抵抗することができず、追及されると事実でなくても事実でないと言えないのです。 逮捕・勾留は少年にとって大人以上に異常な世界であり、非行が事実でない場合はもちろん、非行が事実であっても、その精神を安定させるため、両親などの面会は欠かせません。
少年鑑別所は、少年がどんな性格か、どうして非行をしてしまったのかなどを調査する場所です。非行をしてしまう少年本人にどのような問題があるのかを鑑別(=調査)し、家庭裁判所に資料として提出しています。少年が少年鑑別所にいる期間は、多くの場合、4週間以内です。 少年鑑別所は神奈川県内に一つしかありません。もちろん、少年鑑別所にいる間は自由が制限されます。
少年が非行を犯し、勾留された場合、その勾留が終わると同時に少年鑑別所に移るケースがよく見られます。ただ、少年が受験直前である、卒業のために試験を受ける必要があるときなどで、両親等が少年の監督をしっかりできると認められる場合には、家庭裁判所が少年を少年鑑別所から外へ出してくれる可能性があります。 逆に、勾留されていないのに、少年やその生活環境に問題があるとして、家庭裁判所の判断でいきなり少年鑑別所に入ることもあります。
非公開の法廷で、裁判官が少年・保護者等から事情を聞いて、少年院に送るか・自宅等で保護観察所の保護観察を受けるかなどの処分を決めて、審判を下します。少年には、審判までの間に少年鑑別所のほか、家庭裁判所調査官や付添人も関与します。
調査官は、心理学など専門知識を有した人で、少年の保護者や学校からも事情を聞きながら、少年がどんな人物か、生育環境はどうか、どうして非行をしてしまったのかを調査して、裁判官に報告します。付添人は、少年審判まで少年に付き添う人で、弁護士のほか、保護者その他適切な人が就任できますが、 弁護士以外が就任する場合には家庭裁判所の許可が必要です。付添人は、少年が少年鑑別所や調査官の調査を受けることへの助言を与えたり、少年が非行を反省し社会復帰(更生)するための指導などを行います。 弁護士の場合には、少年鑑別所や調査官と並行して、少年の問題点を分析し、更生の方法等について、家庭裁判所等と協議し、またその意見を裁判所に報告します。
こうして、家庭裁判所は、少年鑑別所・調査官・付添人などから調査内容の報告を受け、最後に裁判官自ら少年・保護者らから事情を聴取して、審判を下します。
少年は大人と比べて、自分の意見をその通り人に伝えるのがなかなか難しく、また、警察署や少年鑑別所で身体拘束されることに大人以上にストレスを感じるもので、大人以上に補助・精神的ケアを必要としています。 少年が非行をすると、多くの場合、逮捕・勾留、少年鑑別所、少年審判を経由して処分が決まります。
弁護士は、逮捕・勾留段階から弁護人として少年・保護者に関与でき、少年の緊張をほぐしつつ、取調べに対する指導や状況説明を行い、警察や検察に対して適法・適正な捜査を行うようにアプローチができます。 捜査が終わって、少年鑑別所への入所の必要がない、入所するのに大きな障害があるということになれば、その旨を家庭裁判所に報告し、少年鑑別所入所を回避するための活動を行います。仮に少年鑑別所に入った場合には、少年・保護者と更生の道を一緒に考え、学校や職場との調整、被害者との示談をし、 必要な場合には家庭に早く戻れるように家庭裁判所と交渉します。
少年はまだ若く、やり直しがきくとされ、大人と異なる少年審判という手続が用意されています。しかし、やり直すことはそう簡単ではありません。逮捕・勾留から少年審判まで早ければ2ヶ月以内で少年は更生のための一歩を踏み出さねばなりませんが、 そのためには、少年が厳しい環境の中で落ち着いて考え、内省を深めることが必要です。保護者も事件を冷静に見つめて、自己の役割や責任を再認識する必要があります。
弁護士は、捜査機関である刑事・検事、調査機関である少年鑑別所・調査官とは別の少年に一番近い立場で常に考え、少年・保護者とともに最善の更生の道を追及していきます。弁護士は、少年・保護者の皆様が少年審判を通じて更生の道を考えるためのお手伝いをしています。
以上は基本的事項が中心ですが、具体的な事実に即した解説は、直接当事務所の弁護士までお問い合わせください。