遺言書についてよくあるご質問を、質疑応答形式で掲載しています。ご参考になさってください。
遺言書
自分が死んだときに、その財産を誰にどのように与えるか、そのほか自分が死んだときに何をどうしたいか、ということを記載するものです。
遺言書には、自分が死んだらどうしたいかを色々書くことができます。ただし、自分ができることを書かなければ意味はありません。通常は、自分の財産をどうするかを書くことになります。遺言書は「方式に従って」書かなければなりません。また、遺言書は、15歳になったら書くことができます。
人が亡くなった場合、その財産は相続されて、自動的に引き継がれます。相続する人(=相続人)、順番、相続する範囲(=相続分といいます)は法律で決められています(下記参照)。
つまり、それ以外の人に自分の財産をあげたい場合、ある人に相続分以上の財産をあげたい場合には、その意思を表明しなければなりません。そのときの意思表明が、「遺言書」なのです。
- <相続人と順番>
- 1.子どもがいる場合
→配偶者と子ども(配偶者がいなければ子どものみ) - 2.子どもがいない場合
→配偶者と祖父母(配偶者がいなければ祖父母のみ) - 3.子どもも祖父母もいない場合
→配偶者と兄弟姉妹(配偶者がいなければ兄弟姉妹のみ) - 4.子どもも祖父母も兄弟姉妹もいない場合
→国の財産になる
- <相続分>
- 1.の場合、2分の1ずつ(配偶者がいなければ子どもが全部)
- 2.の場合、配偶者が3分の2、祖父母が3分の1(配偶者がいない場合は同じ)
- 3.の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(配偶者がいない場合は同じ)
A1でも申し上げたとおり、遺言書は方式に従って、書かなければなりません。
その方式は法律で決められています。それ以外の方式で書いても、効果は認められません。
- 民法では、基本的な方式として、以下の3つが定められています。
- 1.自筆証書遺言
- 2.公正証書遺言
- 3.秘密証書遺言
1.は、遺言者(=遺言をする人)が、内容を全部手書きし、日付、署名もして、印鑑を押すものです。
2.は、遺言者のほかに公証人と証人2人以上が立ち会い、内容が間違いないことを確認して、公正証書を作成するものです。
3.は、内容を自分で作成して、誰にも分からないように封書した上で、公証人と2人以上の証人に、自分の遺言書に間違いない旨封筒に記載してもらうものです。
遺言作成時の証人や立会人には、未成年者・将来相続人となる人とその親族の一部・財産をもらう予定の人とその親族の一部・公証人の関係者の一部の人はなることができません。
- また、特別な遺言方式として、以下の4つが定められています。
- 4.死亡危急者の遺言(→Q7)
- 5.伝染病隔離者の遺言
- 6.在船者の遺言
- 7.船舶遭難者の遺言
これらは、その名のとおり遺言する必要性が高いときにどういう遺言書を書けばいいのか定めたものです。それぞれ別の手続きが必要ですが、1.から3.の基本的方式で遺言できるようになってから6ヶ月間生存した場合に効力が失われるなど、特別な効果があります。特に臨終時などの遺言である4.については、Q7で詳しく説明いたします。
どの財産を誰に与えるか、を書くことになります。
たとえば、預貯金がある場合には、Aさんに全部与えるとか、AさんとBさんに半分ずつ与えるということになります。不動産でも同様です。 また、遺言書では、タダで財産を与えたくないときに、相手に負担を求めることができます。たとえば、Aさんに建物を与える代わりに、Aさんは遺言者の妻に毎月10万円を支払う、というものです。 さらに、遺言書には、遺言内容を実行するための手続を誰が行うか書くことができます。遺言者執行者と言って、相続人でも第三者でもなれます。遺言内容の実行は法律の専門家である弁護士が担当するとスムーズに手続できることから、 弁護士を遺言執行者として選任する場合が多いです。
一度書いた内容は撤回できますが、その場合には、どこを撤回するかを書いた遺言書を作成する必要があります。当然上記1.から7.の方式に従わなければなりません。
また、撤回するという遺言書を書かない場合でも、後に書いた遺言が前の遺言と矛盾する場合には、後に書いた遺言が効力を持つと定められています。 遺言者が、遺言を書いた後亡くなるまでに、その書いた遺言と矛盾する法律上の行為をした場合にも、その法律上の行為が効力を持つと定められています。遺言者が遺言書を破棄し、遺言で言及した財産を破棄したときも、撤回となります。 一度撤回したものは、基本的に再撤回できません。
遺言書は誰にも発見されなかったら意味がありませんし、コピーを持っていても効果はありませんから、原本を厳重に保管しておく必要があります。遺言公正証書の場合には、遺言者には遺言書正本が交付されますので、それを厳重に保管します。
1.以外の遺言書では、公証人などの第三者が関与しますが、信頼できる者に自分が死ぬまで預かってもらうとよいでしょう。貸金庫などでもよいです。公証人は預かってくれません。
1.の場合でも、信頼できる人に預かってもらうことができます。
遺言書は、往々にして、一部の相続人に不利益になるため、家族に秘密で作成されることが多くあります。そのため、自分の意思が邪魔されないよう厳重に保管しなければなりません。弁護士が作成を依頼した場合には、もちろん弁護士が責任を持って管理することになりますが、知人などに預ける場合には、十分に注意が必要です。
もう臨終で布団から動くことができず、話すことしかできない場合には、ゆっくりと遺言書を作ることができません。急いで、その場で遺言書を作る必要があります。これが4.死亡危急者の遺言です。
まず、臨終時など死亡の危急に迫ったことが必要です。 証人に3人以上を選び、その一人に遺言の内容を口頭で伝えて、その人が書きます。それからその人がその内容を遺言者と他の証人に読んで聞かせるか見てもらうかして、証人全員がその書いたものが正確であることを承認した後、遺言者と証人全員が署名押印して完成です。 この遺言書は作成後20日以内に、証人の一人か利害関係人が家庭裁判所に確認をお願いします。それで家庭裁判所がその内容を見て遺言者の真意であると判断しなければ、遺言書として効力を持ちません。 また、臨終などから脱した後、6ヶ月遺言者が生存した場合には、遺言書は効力を失います。
人が亡くなって、誰かが遺言書を保管していたり、相続人が遺言書を発見したとします。もし、その遺言書が1.自筆証書遺言、3.秘密証書遺言の場合、保管者や発見した相続人は、それを家庭裁判所にもっていき、「検認」という手続きを取らなければなりません。 家庭裁判所に行かないまま銀行に行っても、相手にしてくれません。 「検認」は、遺言書が法律に従った正当なものかを判断してくれるものです。これを経由して、やっと遺言書を使うことができます。 また、遺言書が封筒に入って封印されている場合は、家庭裁判所に持っていく前に、絶対にその封印を開けてはいけません。封印されている場合には、家庭裁判所が相続人などの立ち会いのもと開封しなければなりません。 なお、2.公正証書遺言は、公証人が遺言書の内容そのものを法律に従った正当なものと認めて作成するものですから、「検認」は要求されていません。 4.から7.は1.3.と同じです。
遺言者は自分の財産を遺言によって自由に処分できるのが原則です。 しかし、遺言者と一緒に生活する家族は遺言者の財産を利用して生活しているのが通常であり、遺言者の死亡によってその利用ができず、生活できなくなれば大変です。その者を保護しようというのが遺留分の制度です。 相続人は、配偶者・子・親・兄弟姉妹ですが、遺留分権利者は、そのうちの配偶者・子・親のみで、兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。 また、遺留分の範囲は、親のみが相続人の場合には遺産の3分の1、それ以外の場合には遺産の2分の1です。この範囲で、その人たちは財産を承継する権利を持ちます。 たとえば、遺留分を無視した贈与があったときは、遺留分権利者は贈与を受けた者に対して、遺留分減殺請求を行います。 そのルールについては細かく規定されており、詳細はここでは説明できませんが、請求期間としては、請求者が相続の開始し減殺すべき贈与などがあったことを知ったときから1年間とされています。また、相続が開始した後10年を経過したら請求できません。
以上は基本的事項が中心ですが、具体的な事実に即した解説は、直接当事務所の弁護士までお問い合わせください。